触れて感じる力が転倒を防ぐ鍵

高齢になると「足が上がらない」「ふらつく」といった悩みが増えます。多くの方は筋力不足を思い浮かべますが、実はそれだけではありません。転倒予防の鍵を握るのは、「触覚」と「目と首の協調運動」にあります。

触覚を意識したトレーニングの重要性

触覚とは、皮膚を通じて圧力や動きを感じ取る感覚です。年齢を重ねると、手足や足裏の感覚が鈍くなり、身体の位置を正確に把握しにくくなります。

触覚を意識したトレーニングでは、床の感触を感じながらのバランス練習や、タオルを足指でつかむ運動などが効果的です。こうした刺激は神経を活性化し、「今、自分の身体がどの位置にあるか」を脳が認識しやすくするため、転倒防止に役立ちます。

目と首を分けて動かすことの大切さ

高齢になると、目と首の動きが一緒になりがちです。

本来、人は「目を動かしてから首を動かす」ことで、視覚情報を素早く処理し、姿勢を安定させています。

この分離運動ができなくなると、目線を動かすたびに頭ごと動いてしまい、めまいやバランスの乱れが起きやすくなります。

簡単なトレーニングとしては、頭を固定して目だけを上下左右に動かす「視線運動」や、目線と頭の動きを別々に意識する体操がおすすめです。これにより、空間認知力が向上し、ふらつきを感じにくくなります。

まとめ

高齢者の転倒予防には、筋力だけでなく「感覚を取り戻すこと」が欠かせません。足裏や手で感じる触覚を刺激し、目と首を分けて動かす練習を取り入れることで、身体の感覚が蘇り、安定した動作が可能になります。

トレーニングは“力”よりも“感覚”を磨く時代。小さな感覚の積み重ねが、大きな安心につながります。