「見る」「聞く」「触る」など、私たちの“感覚”は自然と起こるものだと思っていませんか?
でも実は、私たちが感じている世界は、ただ受け取っているだけではなく、“自分でつくり出している”とも言えるのです。
感覚と脳の省エネ戦略「自由エネルギー理論」
私たちの脳は、つねに「予測」を立てて生きています。
たとえば、冷蔵庫を開けたとき「冷たい空気がくる」と思うのも、経験からの予測です。
「自由エネルギー理論」とは、脳がこの“予測”と“現実”のズレ(これを「予測誤差」と呼びます)をなるべく減らそうとするしくみのこと。
ズレが少ないほど、脳は安心してエネルギーを節約できる。だから脳は常に「ズレ」を修正しようと頑張っています。
つまり、脳にとってのゴールは「できるだけ無駄なく、うまく世界を感じる」こと。
感覚は、そのための“手がかり”なんですね。
「感じる」は「動いて確かめる」こと?〜能動的推論〜
では、感覚のズレ(予測誤差)が起きたとき、脳はどうやって修正するのでしょう?
その一つの方法が**「能動的推論」**です。
たとえば、暗い部屋で何かが動いた気がしたとき、「目を凝らして見る」「一歩近づいて確かめる」といった行動を無意識にとりますよね。
これは、ただ待っているのではなく、自分の身体を動かして感覚のズレを小さくしようとする、脳の働きのひとつ。
つまり、“感じる”ということは、実は“動いて確かめる”ことでもあるんです。
このしくみは、日常のあらゆる行動に関係しています。
赤ちゃんが物を手に取って舐めるのも、見えているものと感覚のズレを確かめる「能動的推論」のひとつなのです。
まとめ〜感覚は、動きとつながっている〜
私たちの「感じ方」は、受け身ではなく、いつも“予測”と“行動”のくり返しの中にあります。
感覚はただの入力ではなく、私たち自身が動いてつくり出しているもの。
このことを知っておくと、身体を使った学びや運動がなぜ大切なのかも、少し見え方が変わってくるかもしれません。
「動いて確かめる」ことは、あなたの世界を豊かにする力を持っています。
これからも、そんな感覚の広がりを一緒に感じていきましょう。